JIA建築家大会 2015金沢

ご挨拶

公益社団法人
日本建築家協会会長
芦原太郎

「みんな力」—ともに在る社会へ— をテーマにJIA建築家大会2015金沢が開催されます。私達建築家は市民・行政・専門家が連携した「みんな力」の一旦を背負って社会貢献していきたいと考えています。

イギリスではCABEという機構が支援して地域主体のまちづくりを支援して成果を上げていますが、日本建築家協会は日本版CABEとも言える、市民・行政・専門家が連携するまちづくり機構を提唱して、建築家による社会貢献活動を推進しています。 金沢の街は、日本の自然や伝統文化とともに在る自分に気づかせ、日本人に生まれてよかったと思わせてくれる場所です。 自然とともに在る・まちとともに在る・社会とともに在る・そして家族、友人、地域の人々とともに在ることで人々は幸せを感じるものです。

文化人類学者の上田紀之氏は自己のアイデンティティを獲得するには、他者との差異を測るか、ともにある感覚に気付くかであると述べています。 自分はあの人達とは違う人間だ、あの人よりは優れているなどと考えているといずれ心穏やかではいられなくなるでしょう。 ともに在る自分に気付いてアイデンティティを獲得できた人は、ホリスティックな全体と自分の関係を意識して安住の地を見つける事が出来るはようです。ともに在ることの気付きにより人々の「みんな力」はますます強力になり持続して行くはずです。 素晴らしい文化と伝統を誇るこの金沢の地でJIA建築家大会2015を開催出来た事を大変嬉しく思います。

是非、多勢の方々にこの大会に御参加頂き「みんな力」—ともに在る社会へ—に向けた具体的な一歩を踏み出して頂ければ幸いです。

JIA建築家大会2015
金沢大会委員長
近江美郎

待ちに待った北陸新幹線が50年の運動を経てようやく3月14日開業しました。東京から金沢まで2時間30分、デフレ脱却も間近の景気上昇の中、明るい話題の一つとして連日マスコミ等に取り上げられ、お客さまをお迎えするお祭りムードも手伝って、飲食店等は連日大盛況が続いている様であります。また、この機会にと各種団体の全国大会が金沢に集中し、想定外続発で、会員の皆さんには宿泊や交通機関の問題等でご迷惑をおかけするのではないかと心配しております。

今大会は、前回北陸の開催が2001年から14年ぶりで有ります。中心的メンバーが今もって変わっていない世代交代の遅れている支部でもあります。リーマンショック以降経済が縮小する厳しい状況の中、業務改善が進まない結果として、若い世代が育ってこなかったことも一因であると考えます。そういった面で、今大会が若返りを図る絶好のチャンスであり、若い人の目線で積極的に企画を作り上げましたので期待頂きたいと思います。

昨年、建築3団体の結束で士法改正に漕ぎ着けたことは、お互いの協力なくして結果は無いことを確認出来たこととして、大いに評価するところです。また、3会協同によるフォーラムの開催は、今後の方向を決めるうえで重要な意味を持ち歓迎するところです。

3.11の東北大震災以後、「絆」が叫ばれる中、我々建築家の価値観も市民中心とした共にある社会を築くための方向に大きく舵を切ったことで、大会のテーマは「みんな力」としました。フォーラム会場は東茶屋街の近隣に位置する東山・卯辰山山麓寺院群、懇親会は金沢城跡の五十間長屋、前夜祭は街中宴会と題し、指定した町の中の料理店からお好みのお店でと、いずれも市民と触れ合う機会を多く持つ企画としました。

織田信長によって能登1国を与えられていた藩祖前田利家が、1583年の賤ヶ岳の戦いの後に豊臣秀吉に降って加賀2郡、さらに1585年には佐々成政と戦った功績によって嫡子利長に越中西三郡が与えられて、3国にまたがり100万石を領する前田家領の原形が形成された。加賀前田藩の栄華に思いを馳せ、北陸の歴史と文化を感じつつ、新鮮な北陸の食材を使ったおいしい料理を堪能頂ければと思います。多くの皆さんの参加をお願いします。

JIA建築家大会2015
大会実行委員長
西川英治

JIA2015金沢大会のテーマは「みんな力―ともに在る社会へ」と謳いました。東北の大震災の後開催された2011UIA東京大会ではGNHを重視した政策を遂行し「幸せな国」と評されるブータンのティンレー首相の講演に多いに共感を覚え、これからの日本社会のあり方、建築の在り方を深く考え直した方も多いと思います。戦後の日本社会は復興に始まり1960年代の高度成長期を経て、成長重視の後遺症としての公害問題が顕著になった1970年代、それを巧みな技術力で克服しジャパンアズNo1と評された1980年代とそれに続くバブル期、そして1990年代のバブル崩壊。その後国力の衰退が著しく「失われた20年」と揶揄された時期を経て発生した東北大震災。こうした浮き沈みの時代を多くの日本人が生き抜いてきたわけですが未曽有の震災経験は建築家に「人間の真の幸せとは?豊かさとは?」「建築家は社会に何を果たすべきか?」という原点を改めて考えさせたーそんな経験であったと思います。成長神話に惑わされることなく日本の伝統的コミュニティの復活・人々の絆こそ日本の復興にとって大切であるという思いを国民は共有したかのように見えました。しかし、それから4年の歳月が流れ、震災復興がままならない中で、あらゆる事象に風化現象が生じ、忘れてはならない痛みさえ忘却の途にあるのではないかと感じます。時折し、新国立競技場の問題がマスコミを賑わしておりますが、これからの日本社会や建築のあり方を指し示す、そのような競技場が創られることを切に望んでおります。

参加者が今一度日本社会の人々のつながりを静かに考えるーそんな大会にしたいと考え、そのような大会に相応しい会場として大会初日を金沢の東山・卯辰山山麓寺院群に設定しました。東山・卯辰山山麓寺院群は重伝建に指定された静かな佇まいを持つ一帯であり「ともに在る社会」に思いを巡らす絶好の場と考えております。

本大会の特徴は「みんな力」を発揮することでもあります。東山・卯辰山山麓寺院群でのフォーラムは「みんなフォーラム」と名付け、北陸の建築団体共催としております。昨年の士法改正は建築設計関連団体の協力なしでは成立することもあり得なかったことを考えると、今後ますます建築団体の連携を進めていかなければなりません。地方においても一層の協力関係を築いていく必要があり、今回の大会はその幅を広げ多くの団体に参加していただきました。二日目以降のプログラムにおいても21世紀美術館との共催を図るなど、地域社会の連携を目に見える形で進めています。

本大会がこれからのJIA活動のひとつの指針になればと幸いと考えております。

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